COLUMUN
法律コラム

こんにちは。代表弁護士の水谷です。
5年前にカサンドラ症候群をめぐる離婚記事を書いてから、未だに「記事を読んだのですが…」とお問い合わせを頂くことがあります。
カサンドラ症候群とは、家族や身近な人に発達障害であるASD(自閉スペクトラム症・特にアスペルガー症候群)があることで、コミュニケーションを築くことが難しく、対人関係の問題や心身の不調が生じている状態のこと。
世間的には「夫がアスペルガー症候群で、気持ちを理解してもらえず心身を病んでしまう妻」との認識で、多くのご相談がありますが、実際には少し違うようです。
今日は法律家の立場からカサンドラ症候群について、改めて考えてみたいと思います。
※本記事では、アスペルガーと記載しておりますが、2013年に自閉的特徴を持つ疾患とし統合され、現在の診断名としては「ASD」となります。
名前の由来にもなった、神話の「カサンドラ」とは
「カサンドラ」という言葉の由来は、ギリシャ神話に登場するトロイの王女・カサンドラからきています。
カサンドラは、神アポロンに予言能力を与えられたものの、「予言しても誰にも信じてもらえない」という呪いをかけられました。
自分が真実を予言してもが誰にも信じてもらえない。
この「孤独な苦しみ」が、現代の「カサンドラ症候群」の語源となっているそうです。
カサンドラ症候群=パートナー&周囲に理解されない孤独
カサンドラ症候群は、主に「アスペルガー」の傾向のあるパートナーとの関係において、以下の状況のことを指します。
① アスペルガー症候群のパートナーとの情緒的交流の乏しさから、関係性が悪化している状態
② その事実をパートナーも周囲も理解せず、本人だけが苦しみを抱えたまま孤立した状態で生活していること
(引用:https://osakamental.com/symptoms/cassandra-affective-disorder)
苦しさが、ギリシャのカサンドラと同じように、パートナーのみならず「周囲にも理解されない」ことが苦悩のきっかけになっているようです。
友人と食事に行き、パートナーへの不満を打ち明けたところ、「そんな人には見えない」などと言われ、つらさを理解してもらえない。誰に話しても親身になって聞いてくれず、孤独感ばかりが募るのだそう。
このようなパートナーを持つ配偶者の傾向を「カサンドラ」になぞらえたのが「カサンドラ症候群」。
2003年に心理学者が名付けていますが、障害としては確立していません。
そのため、診断名としてのカサンドラ症候群ではなく、「状態」として捉えるべきとなります。
ASD・アスペルガー症候群とは
アスペルガー症候群は以前の診断名であり、現在は正式な診断名としては使われていません。
ASD(自閉スペクトラム症)とは、発達障害の一つで「コミュニケーションや社会性に困難を抱えることがある」「特定の興味やこだわりが強く、行動や思考に特徴が見られることがある」とされます。
しかしながら、スペクトラム=連続体、つまりしょう害の程度や表現が連続的で、明確な境目がないことですから、その内容、程度はさまざまですし、その診断にも精神科医の診断を要します。
ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズほか、著名で有能な経営者、技術者がこれに分類されると言われる通り、社会的、知能的には成功している例も多く、周囲には到底診断がつくとは理解されづらいのもこのためです。
弁護士からみる「アスペルガー」「カサンドラ」という事象
弁護士の観点からまず言えることは「アスペルガーかどうか」「カサンドラかどうか」は、私たち法律家の観点でジャッジしたりアドバイスできたりするものではありません。
でも、配偶者の思考のパターンからして、どんなに努力をしても心が通わない。その辛さを、周りから見たら「問題ない家族」と言って理解してもらえない。
こういった内容そのものは本当によくあるご相談ですし、言わば夫婦の悩みの普遍的なテーマだと思います。
そこに我々からの診断名の判断は不要であろうかと思います。
家庭裁判所でも、アスペルガーがカサンドラといった診断名や呼び名を基準とした判断はされていません。
アスペルガーだから・カサンドラだから「離婚事由あり」や「慰謝料原因あり」とは当然なりません。この点はご理解いただきたいと思います。
弁護士へ相談に行く際の、具体的なアドバイス
日々忙しい中では難しいことですが、毎日の生活の中で積み重なった些細なこと、「こう言ったらこう返された」「この日はこの予定がこんなことになった」具体的なエピソードを一つ一つ記録していただくと、具に状況がわかりやすくなります。
ご相談にいらっしゃる際、また自ら家庭裁判所の門戸をたたく際には、こうした日々の事象を記したものを、ご自身でご用意いただくことをおすすめします。
ご本人の辛さが、定義されることによって理解されたことを示し、楽になる、ということは大いにあるでしょう。
実際にはこのような事態は、広く「性格の不一致」として扱われてしまうので、配偶者側の同意が得られなければ、ただちに離婚は難しいのが現状です。
長らく理解されない状態が続き、最終的に別居となり、別居期間と相まって「離婚事由あり」と判断されることが多いでしょう。
日本の離婚事件とメンタルケアの必要性
私たち弁護士も、離婚までの長い道のりでは、できる限り寄り添えるよう、日々尽力しています。
カサンドラの語源通り、長く続く心の苦しみには、周りに理解されないことが原因の一つとなっています。
法的システムに加え、日本にも「心理的側面をサポートするシステム」が必要なのではないか、と思う今日この頃です。
お困りごとは弊所・弁護士へ相談ください
弊所では弁護士事務所には珍しい、オンライン予約システムを導入しております。
予約の際に、ご希望の相談メニューとご都合の良いお時間帯をお選びいただけると好評です。
こちらのページにあります「ご予約・お問い合わせはこちら」よりご予約ください。
もちろん、お電話でもご予約承っております。お電話での弁護士へのご相談は…℡03-3709-6605
法律的な見解はもちろんですが、さらにその一歩、相談者さまの人生に寄り添った形でお話させていただいております。
ご相談がありましたら、お気軽に当事務所までご連絡ください。
- 「共同親権」(共同監護)のこと
- 養育費不払い問題、民法改正なるか?
- 面会交流「会わせたくない」「会わせてくれない」が錯綜する理由
- 長引くコロナ禍、結婚式キャンセルに関する新たな業界指標が発表
- 子の父を決める「嫡出推定」の民法改正について。離婚弁護士がこれまでの矛盾を解説
- 140年ぶりの民法改正。弁護士が読み解く「18歳成人の春」はいかに
- 「テラスハウス」の事案にみる、名誉棄損と侮辱について
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題
- W(ダブル)不倫は珍しくない?! 身の回りで起こってしまった時、慰謝料請求で注意すべき点とは
- 知っているようで知らない「ストーカー規制法」について
- 「ストーカー規制法」警察に動いてもらうためにも、弁護士に相談したほうがいい理由
- 逆転勝訴から考える、「性自認」と「性的指向」の話
- 東京家裁、福原愛さんの「子の引き渡し」審判から読み解く「共同親権」について
- ビッグモーター社事件で感じる違和感と、刑事・民事の責任の所在とは
- 日大アメフト部の薬物事件をめぐって、法律家の見解
- ハル・ベリーの離婚がから考える、双方が平等に監護する「交代監護」とは
- 「共同親権」導入に向けて、法制審議会にて一歩前進
- 法律で考える、ジャニーズ元社長の「性加害」問題・続編
- 日本での「無戸籍問題」をめぐって
- ジャニーズ「社名変更」なるも、法人格は「そのまま」という事情
- 「性同一性障害」の手術要件で、最高裁の下した判決について
- 「面会交流アプリ」利用について、離婚弁護士が思うこと
- 芸能人のスキャンダルと週刊誌報道、「名誉毀損」について
- 共同親権、国会への法案提出見込み
- サッカー日本代表選手の性加害疑惑について、法律家の思うところ
- 「共同親権」の導入、民法改正案を閣議決定か
- 福原愛さん、子どもの監護「共同親権」で和解か
- 共同親権を認める民法改正案が、参院で審議入り
- ついに「共同親権」法案公布。施行は2026年5月までに
- 共同親権導入まであと1年。親権者の決定は「監護の実績」の有無で決まる
- 問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | |
29 | 30 |
- 2025年
- 2024年
- 2023年
- 2022年
- 2021年
- 2020年
- 2019年
ご予約・お問い合わせ・オンライン相談
- 個人のお客様 HOME
- 法律コラム
- 問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解
- 個人のお客様 HOME
- 法律コラム
- 離婚(慰謝料)
- 問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解
- 個人のお客様 HOME
- 法律コラム
- 水谷 江利
- 問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解