問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解 | 法律コラム | 個人のお客様に特化した弁護士法人 世田谷用賀法律事務所

 

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2025.06.06 | Vol.283

問い合わせの多い「カサンドラ症候群×離婚相談」、その後と弁護士的見解

【離婚相談の現場から・代表コラム】



こんにちは。代表弁護士の水谷です。

 

5年前にカサンドラ症候群をめぐる離婚記事を書いてから、未だに「記事を読んだのですが…」とお問い合わせを頂くことがあります。


カサンドラ症候群とは、家族や身近な人に発達障害であるASD(自閉スペクトラム症・特にアスペルガー症候群)があることで、コミュニケーションを築くことが難しく、対人関係の問題や心身の不調が生じている状態のこと。

 

世間的には「夫がアスペルガー症候群で、気持ちを理解してもらえず心身を病んでしまう妻」との認識で、多くのご相談がありますが、実際には少し違うようです。

 

今日は法律家の立場からカサンドラ症候群について、改めて考えてみたいと思います。

 

※本記事では、アスペルガーと記載しておりますが、2013年に自閉的特徴を持つ疾患とし統合され、現在の診断名としては「ASD」となります。

 

名前の由来にもなった、神話の「カサンドラ」とは

「カサンドラ」という言葉の由来は、ギリシャ神話に登場するトロイの王女・カサンドラからきています。

 

カサンドラは、神アポロンに予言能力を与えられたものの、「予言しても誰にも信じてもらえない」という呪いをかけられました。

 

自分が真実を予言してもが誰にも信じてもらえない。

この「孤独な苦しみ」が、現代の「カサンドラ症候群」の語源となっているそうです。

 

カサンドラ症候群=パートナー&周囲に理解されない孤独

カサンドラ症候群は、主に「アスペルガー」の傾向のあるパートナーとの関係において、以下の状況のことを指します。

 

① アスペルガー症候群のパートナーとの情緒的交流の乏しさから、関係性が悪化している状態

 

② その事実をパートナーも周囲も理解せず、本人だけが苦しみを抱えたまま孤立した状態で生活していること

(引用:https://osakamental.com/symptoms/cassandra-affective-disorder

 

苦しさが、ギリシャのカサンドラと同じように、パートナーのみならず「周囲にも理解されない」ことが苦悩のきっかけになっているようです。

 

友人と食事に行き、パートナーへの不満を打ち明けたところ、「そんな人には見えない」などと言われ、つらさを理解してもらえない。誰に話しても親身になって聞いてくれず、孤独感ばかりが募るのだそう。

 

このようなパートナーを持つ配偶者の傾向を「カサンドラ」になぞらえたのが「カサンドラ症候群」。

 

2003年に心理学者が名付けていますが、障害としては確立していません。

 

そのため、診断名としてのカサンドラ症候群ではなく、「状態」として捉えるべきとなります。

 

ASD・アスペルガー症候群とは

アスペルガー症候群は以前の診断名であり、現在は正式な診断名としては使われていません。

 

ASD(自閉スペクトラム症)とは、発達障害の一つで「コミュニケーションや社会性に困難を抱えることがある」「特定の興味やこだわりが強く、行動や思考に特徴が見られることがある」とされます。

 

しかしながら、スペクトラム=連続体、つまりしょう害の程度や表現が連続的で、明確な境目がないことですから、その内容、程度はさまざまですし、その診断にも精神科医の診断を要します。

 

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズほか、著名で有能な経営者、技術者がこれに分類されると言われる通り、社会的、知能的には成功している例も多く、周囲には到底診断がつくとは理解されづらいのもこのためです。

 

弁護士からみる「アスペルガー」「カサンドラ」という事象

弁護士の観点からまず言えることは「アスペルガーかどうか」「カサンドラかどうか」は、私たち法律家の観点でジャッジしたりアドバイスできたりするものではありません。

 

でも、配偶者の思考のパターンからして、どんなに努力をしても心が通わない。その辛さを、周りから見たら「問題ない家族」と言って理解してもらえない。

 

こういった内容そのものは本当によくあるご相談ですし、言わば夫婦の悩みの普遍的なテーマだと思います。

 

そこに我々からの診断名の判断は不要であろうかと思います。

 

家庭裁判所でも、アスペルガーがカサンドラといった診断名や呼び名を基準とした判断はされていません。

 

アスペルガーだから・カサンドラだから「離婚事由あり」や「慰謝料原因あり」とは当然なりません。この点はご理解いただきたいと思います。

 

弁護士へ相談に行く際の、具体的なアドバイス

日々忙しい中では難しいことですが、毎日の生活の中で積み重なった些細なこと、「こう言ったらこう返された」「この日はこの予定がこんなことになった」具体的なエピソードを一つ一つ記録していただくと、具に状況がわかりやすくなります。

 

ご相談にいらっしゃる際、また自ら家庭裁判所の門戸をたたく際には、こうした日々の事象を記したものを、ご自身でご用意いただくことをおすすめします。

 

ご本人の辛さが、定義されることによって理解されたことを示し、楽になる、ということは大いにあるでしょう。

 

実際にはこのような事態は、広く「性格の不一致」として扱われてしまうので、配偶者側の同意が得られなければ、ただちに離婚は難しいのが現状です。

 

長らく理解されない状態が続き、最終的に別居となり、別居期間と相まって「離婚事由あり」と判断されることが多いでしょう。

 

日本の離婚事件とメンタルケアの必要性

私たち弁護士も、離婚までの長い道のりでは、できる限り寄り添えるよう、日々尽力しています。

 

カサンドラの語源通り、長く続く心の苦しみには、周りに理解されないことが原因の一つとなっています。

 

法的システムに加え、日本にも「心理的側面をサポートするシステム」が必要なのではないか、と思う今日この頃です。

 

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